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星を継ぐもの [books]

海外では飽き足らず、K氏のおかげで宇宙へ飛ぶ。

星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン 池央耿訳 創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

  • 作者: ジェイムズ・P・ホーガン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1980/05/23
  • メディア: 文庫


永遠のロングセラー、読者投票第1位と帯広告に書いてある。
投票は2009年の結果。
オリジナルは1977年発表で、この本初版は1980年。
そして手元にあるのは2011年の88版。ロングセラーに偽りなし。

プロローグでは、元気な巨人と、瀕死の『彼』がどこか岩だらけの星にいる。
助けを求めて去っていく巨人を見送る『彼』がどうなったかは描かれない。
1から始まる本編はロンドンから始まる。
原子物理学者ハントが、アメリカの宇宙軍本部長コールドウェルに呼び出される。
ニュートリノで透視する技術を使って調べたことがあるという。

示されたのは、月で見つかった遺体。

姿かたちは人間と酷似しているが、調べるほどに謎が深まる。
生物学者ダンチェッカーらの調査なども合わせて、その遺体が、
5万年前のものであると判明する。
プロローグに出てきた『彼』のことだとわかるが、何の手掛かりもない。
彼はチャーリーと仮名をつけられる。

チャーリーは地球人なのか異星人なのか、当時何があったのか、
日記のようなものから言語学者たちが解読した言葉や、
地質研究、遺伝解釈、宇宙原則、様々な角度から検討するごとに
矛盾が浮かび上がってきて、まとめ役に任命されたハントは多忙を極める。

地球と月の間を活発に行き来していることくらいで、
ここまであまり飛び抜けた未来感はない。
設定が2020年代後半という、もはや手に届く世界。
あと10年でこんなことになるかどうか、完全に否定もできないリアルさがある。
人名、組織名、地名のカタカナ地獄と、専門用語地獄に耐えて読み進める。

話は、木星の衛星で高度な技術の宇宙船残骸が発見されて飛躍する。
中に残されていたのは地球生物とは次元の違う巨人の遺骨。
どうやら消滅したらしい惑星と、その巨人文明とを関連付けて、
チャーリー文明の研究も一気に進んでいく。
ハントも月を経由し、木星衛星ガニメデへと派遣される。

チャーリーはどこから来たのか。
その問題にあった矛盾を一挙に解決する推論をハントはみつける。
そうしてさらに、チャーリーと地球人が元は同じだった可能性も浮上する。
最初は距離を置いていた二人の学者が意見をぶつけ合い、
筋の通った結論を導いていく様子は、ノンフィクションのように描かれる。

これぞSF。サイエンスフィクションであると、解説の鏡明氏がいう。
確かにサイエンスの要素が強い。強いどころかそれが中心の物語。
年代測定方や速度原理など、登場人物には当たり前のことが難解で
ついていこうとするとページがなかなか進まない。
ただ、論争の末に人間たちが醜い派閥闘争を演じるような描写は少なく、
とにかく謎の究明に挑む話なのが潔く、理解したいという欲求を煽る。

人間同士のかけひき、特に男女間のあれこれがなく、そこがいい。
仲間を救うお涙頂戴な展開もない。ただただ学者たちが討論している。
衛星から見た木星の様子あたりはファンタジックではあるものの、
明らかにやりすぎだろう、ありえない、という神がかりな派手さはない。
宇宙開発に対する警告でももちろんない。

エピローグで、先入観が発見を妨げる描写があり、そこに皮肉を感じる。
固定概念がいかに人間をダメにしているかが、全編を通して強調されている。
想像力がなければ進化もできない。
結論を確定させずに物語は終わるが、ハントと同じように、
どこかへ逃げ延びた巨人たちの存在を期待してしまう。
読むのはやたらと疲れるが、心地よい刺激を受けた。
星4つ。

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