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ごはんのおとも [books]

左手と右足の親指を負傷した。
手は、さくっと切って、かっこよく赤い線がついている。
足は割と深くえぐいことになって、歩くのもままならない。
小さな怪我の地味な痛みで、もはや何をするのも憂鬱。
大人しくひたすら本を読んでいる。

全然関係ないが、以前図書館で本探しに倦んで読んだ本。
なんだかんだでいつも本に助けられる。

ごはんのおとも(たな 実業之日本社)

ごはんのおとも

ごはんのおとも

  • 作者: たな
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2015/02/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


帯広告に「もたいまさこさん、微笑」と書いてあるのがまずうまい。
漫画だが料理エッセイの棚に入っていた。
著者の紹介として「大阪府出身 米と豆と夏が好き」とだけ書いてある。
短編連作で、登場人物たちはだんだん関りを持っていく。

1「きみとのであいは、」
冒頭に博多通りもんが出てきて嬉しい。
ぽっちゃり独身男は、スーパーでぶつかった女性が見ていた雑誌にあった
黄身のしょう油漬けを作り、家に帰ってごはんにのせて、至福のひととき。


2「騒がしいことのは」
1でぶつかられたのは女子大生で、都会に出て一人暮らしを始めたばかり。
まだ環境に馴染めずにいて、賑やかだった家族たちのことを思い出す日々。
食べ物の詰まったゆうパックが届き、中には家族からのメッセージがぎっしり。
『米は毎日食べなさい 父』などと書いてあり、しそみそを作り、
焼きおむすびを食べてほっこり。

3「一膳分のあまやかし」
2の女性大生のバイト先の和菓子屋によく行く独身男。
まったくついていない一日で、探し求めたなめたけも売り切れ。
泣きそうなところに、屋台の『ひとくちや』店主が通りかかり、
なめたけごはんを食べさせてくれる。常連たちにも励まされて元気に。

4「願いをこめて」
お盆に亡き夫を想うおばあちゃんが作る、好物のなすの浅漬け。

5「65歳の克服」
パソコンの使い方をなかなか覚えられず娘に怒られる老男。
街に出ても、人々の何気ない言葉にプライドが傷つけられる。
ぐったり帰った食卓に苦手なセロリのじゃこ炒めが出て、食べてみる。

6「たったひとこと」
流行りのキャラ弁よりも、こぶの佃煮が好きな幼稚園の女児。
大好きな男の先生に渋いといわれたが、柿の渋さを知ってがっかり。
しかし、カフェの優しい店主に髪が綺麗と褒められて機嫌を直す。

7「魔法みたいに」
『ひとくちや』の主人クマさんは、どんなときも用意周到。よく気が付く。
幼少期に調理実習で作ったそぼろおむすびが取り持つ縁で、年上女性と結婚。

8「ずうっと」
突然亡くなった妻が冷凍していたきんぴらごぼうを食べられずにいる男。
その匂いがする4の家の前で眠り込んでしまい、事情を話し、慰められる。

9「ごはんのあいず」
花見に集まってきた『ひとくちや』の常連たち(これまでの主人公たち)。
6の女児が音頭を取り、「おててをあわせて いただきます!」で、終わり。

それぞれの終わりに、話に出てきたごはんのおとものレシピが載っている。
そこにも数コマの漫画があって、それも味がある。
8の男の枕元に、さみしくないようにとぬいぐるみを並べる6の女児が愛らしい。
絵のタッチも柔らかく、食べ物は美味しそうで、尖ったところがない。

さらにレシピのあとに何の説明もない絵が描かれている。
学校給食を食べている男女が成長し、高校生くらいになり、
女子が学食で親子丼、帰り道で漬け物、キャンプでカレー、祭で五平餅、
体育祭でおにぎり、落葉焚きで芋汁、実習で卵焼きを旨そうに食べているのを、
男子がそっと見ているという構図。
最後だけは女子が男子を見ていて微笑ましい。

一杯のごはんに、ほっと息をつく時間を描いたもので、
筋というほどのものはないが、全編通して優しさに満ち溢れている。
また、隅々に遊び心があって、それを探すのも楽しい。
星4つ。

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