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こころのつづき [books]

これも、亡き人の存在感が強い。

こころのつづき(森浩美 角川文庫)

こころのつづき (角川文庫)

こころのつづき (角川文庫)

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/25
  • メディア: 文庫


「野生時代」と「本の旅人」に連載された8話の短編集。
それぞれ少しずつ何らかの繋がりがあるらしいが、相互関係はない。

一話目『ひかりのひみつ』
結婚を機に、母親から死んだと聞かされていた実の父に会いに行く娘の話。
母の再婚相手の義父が気に入らず、もやもやしている。
話を聞き、母親は男の将来を思って身を引いていたことがわかる。
娘は名を明かさず、軽井沢でホテル社長になっている男と式の予行演習をする。

二話目『シッポの娘』
一話目に出てきた同じ種類の犬が登場する。
娘が学校からもらい受けた犬を可愛がっていたが突然亡くして悲しむ父の話。
行きつけの女将が慰めてくれる。

三話目『迷い桜』
前作の女将が薦めていた河津桜を見に行く母娘の旅路。
病気をしてから、自分の好きなように生きようと決めた母は元気いっぱい。

四話目『小さな傷』
癌が再発してしまった伯母のかわりに同窓会に出席する姪。
昔濡れ衣を着せてしまった男性に、レコードを持っていくことを頼まれる。

五話目『Fの壁』
舅の嫌味と妻との不和に耐えかねて離婚した男の家に、息子が来る。
どんどん大きくなる息子に目を張りながら、申し訳なくも思っている。
レコードを物珍しく見る息子は、ギターを教えてほしいと言ってくる。

六話目『押し入れ少年』
父親の締め付けが厳しく、何かあると和室の押し入れに逃げ込む中学生の僕。
進学校に通うが、以前仲の良かった男子に弱みを握られ、いじめも受けている。
日雇い労働の半ホームレス男と出会い、勇気をもらう。

七話目『ダンナの腹具合』
職場の後輩ですぐ腹を壊す夫と出掛ける妊娠七か月の妻。
珍しくアクセサリーを見ている姿に不信を抱き、浮気を疑うが、
実は将来のことを考えて行動していたとわかる。

最終話『お日さまに休息を』
一話目の夫婦の姑の姉の嫁の話。人間関係がややこしい。
同居する姑は脳梗塞で麻痺が残り、リハビリの手伝いなどをしている。
妹が見舞いと称してやってきて愚痴も吐いて帰った後、姑も本音を言う。

よくありそうな状況設定で、登場人物たちの会話と独白が大半を占める。
悩み多き三十代、第二の人生を迎えた六十代あたり、窮屈な十代。
見栄っ張りな男、気の強い女、小心な男、意地を張る女。
結婚、離婚、病気、介護。あるある、という話。
物語の筋の面白さがどうこうではなく、人物たちに寄り添えるかどうかが鍵。
似たような境遇で感情移入できれば猛烈に感動できそう。

基本的には家族の話で、皆どこかで妥協したり、励まし合ったり、
それぞれの事情を思いやりながら、健気に繋がっている。
善人ばかりではなく、癖のある人も出てくる。

最終話の姑の台詞が、おそらく全体のキーワード。

「(略)縁あってひとつ屋根の下で暮らしているんだもの。みんな、家族じゃない?そうよ、家族だから辛い想いをさせるのは忍びないの」
「私は大丈夫ですから」
「ほら、そうやって頑張ろうとするでしょ。あのね、世の中もうちの中も一緒、我慢して頑張ったりする人がいるから、当たり前のことが当たり前のように流れているように思えるのよ。でも、そういうことって忘れがちになる。お父さんも公晴もそう。もっとも、こればっかりはやってみた者しか分からない。だから、分かる人が言ってあげないといけないのよ、頑張らなくていいからって」
(『お日さまに休息を』より)

当たり前にあぐらをかいている人間のなんと多いことか。
他の話でも、当たり前を失って改めて気付いたり反省したりしている。
襟を正さなくてはと、神妙になる本。
星2つ。

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