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レモンタルト [books]

暑い時は酸っぱいものでさっぱりしたい。
柑橘類は加工せず、生そのままがいいけれど。

レモンタルト(長野まゆみ 講談社)

レモンタルト

レモンタルト

  • 作者: 長野 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/10/27
  • メディア: 単行本


青少年の話を書く作家という勝手なイメージがあったのを覆された。
初出は小説現代の連作短編。
姉夫婦が建てた二世帯住宅に住んでいる二十代の男が主人公。
姉は若く亡くなり、三十代前半の義兄は再婚もせずそのまま暮らしている。

美形で不愛想だが優しい義兄を、主人公は随分前から好いている。
亡き父を求めての甘えや、人としての敬いもあるが、
単純に恋い慕う気持ちもあるらしいと、だんだんわかってくる。
そうして、どうやら全体に同性愛者たちの頻出する話だと気付く。



役員たちの、公にはできない仕事を請け負う、特殊な立場にあり、
会社ではほとんど孤立し、主人公は様々な秘密に縛られている。
日々妙ないざこざに巻き込まれ、その都度義兄が手を貸してくれる。
登場のタイミングがよすぎて胡散臭くもあるが、物語なのだから仕方ない。
BL小説と呼ぶジャンルなのかもしれない。

ものわかりのよい義兄の母やら、亡くなった姉の思い出のほうが、あっさり。
出世を気にする同期や、他人の懐を探る男たちのほうが粘着質。
義兄のぶっきら棒なところが、とりわけ爽やかに見えるよう工夫されている。
偏見だが、少女漫画のようなシーンが多くて、文字だけでもこそばゆい。

もらった傘から勘違いの騒動になる『傘をどうぞ』
休日の昼飯用にと頼まれた天然酵母のパンを買ったあとを尾行される。
物音に気付いた義兄が颯爽と助けにきてくれる。
表題作では、彼岸に供える姉の好物だったレモンタルトを買いそびれ、
レモンケーキを持って帰る途中で、やっぱり怪しい男に襲われる。
後日訪れたタルトの店に義兄がいる時点で出来過ぎだが、
「おまえが、レモンタルトを食べたいようだったからさ。」
なんて、すっと言ってのける最後には苦笑するしかない。

『北風ふいて、雪がふったら』では、女性役員の息子を別荘へ送る。
わけありの息子と甥にSAで車を乗っ取られ、途方に暮れるところへ、
義兄とその母が通りかかって、円満に解決してくれる。
『とっておきの料理』でも、急病と窮状のとき、義兄が居合わせる。
男と裸でいる主人公をみても平然としてあしらう。
『傘どろぼう』でも、勘違いで厄介なことになり事故に遭う主人公を、
義兄が助け出し、休養先へ連れていってくれる。

仕事上の人物たちはイニシャルと名前を使い分けて書かれて分かりづらい。
主人公は守秘の精神より、義兄とそれ以外の男と区別しているようにみえる。
義兄の気持ちがはっきりわかりやすく描かれることはないが、
そのポーカーフェイスがかえって怪しく、遅かれ早かれ遠からず…の雰囲気。
登場人物は大人でも、読者対象は少年少女かもしれない。
現実味の薄い恋愛小説。
星2つ。

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