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木暮荘物語 [books]

クラフト・エヴィング商會の装幀。
この、積み木のような絵柄の表紙とタイトルから、ほわんとした話を想像した。

木暮荘物語(三浦しをん 祥伝社文庫)

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2014/10/10
  • メディア: 文庫


ほわんとはしている。殺人も推理もない連作短編集。
木暮荘を中心に、住人や周囲の人を主人公とした話が展開されていく。
小田急線世田谷代田駅から徒歩五分の相当古い木造アパート。
全七話。すべて、性に関する話というのが予想外だった。

第一話「シンプリーヘブン」の主人公は木暮荘203の住人、二十代女性。
学生時代から長く住み、住宅街の花屋で働いている。
三年間音信不通だったカメラマンの元恋人が唐突にやってきて、
現恋人と鉢合わせ、居座った元恋人と三人の奇妙な共同生活が始まる。

第二話「心身」は、木暮荘の空き部屋に住む大家の七十代男。
死にゆく親友が最後の外泊で妻に拒絶されたと嘆くのを聞き、
自分も、と思い始めるがどうしたらいいのかわからず悶々とする。
第一話の現恋人氏から高齢者専門デリヘルを紹介してもらうが、
そこへ妻がやってきてしまい、隣室の女子大生にバレる羽目に。

第三話「柱の実り」は、木暮荘近くに住むトリマーの女性。
駅ホームの柱に水色の男根のような茸らしき突起物を見つける。
同じく気づいたのは、どう見てもやくざの男だが、主人公と同名の犬を飼い、
会話をするうち、一緒に散歩する仲になる。
ある日家に入れ、かつての秘密を打ち明け、自ら抱きつく。

第四話「黒い飲み物」は第一話の女性が働く花屋の女主人が主人公。
同じ建物で喫茶店を営む夫のコーヒーは泥の味がするように感じる。
かつて異常な性欲に支配されていた夫婦だが、夫の両親の死を境に収まる。
その夫の深夜の外出を不審に思い、後をつけ、浮気現場に乗り込む。

第五話「穴」は木暮荘201の住人、就職を期に越してきたサラリーマン。
薄い壁に業を煮やしていたが、押入れに穴を開け、隣の空き部屋に侵入し、
階下の102に住む女子大生の生活を盗み見るようになる。
三人の男と関係を持つ女子大生を嘆き、呆れ、見守る変態生活。
最後に女子大生は覗きに気付いていたとわかるが、譲歩してくれる。

第五話「ピース」は、その女子大生が主人公。
妊娠できない体と中学生で判明し、親に反発し、高校でグレる。
「いろんな男とやりまくった」と自認し、大学で親元から逃げ出す。
友人の一人が無造作に生んだ子を預かってほしいと強引に置いていき、
てんてこ舞の日々が始まる。
無責任さに憤りつつ、このままくれたらいいのにと思うようになる。

第六話「嘘の味」は、第一話の女性の元恋人が主人公。
花屋で毎週バラを買う謎の女に、ストーキングしているところを見られる。
成り行きで、その女の家に居候するが、代償に男女の仲になるべきか悩む。
他人の嘘が料理の味でわかるという女との淡泊な共同生活を続け、
また旅に出るまでに、ようやく元恋人が過去になり、謎の女に惹かれている。

永住する一軒家ではなく、あくまで仮住まいの単身者たちが住む木暮荘。
大小の不満はあるが、諦め、受入れ、小さな事件を起こしながら生きている。
互いの様子が筒抜けで、一切無関係ではいられないのもミソ。
ほんの数年でも、どこかに住んだときのことは忘れない。
何かをきっかけに思い出す、過ぎてしまえば一瞬の出来事も、
そのときは一大事だったというのは、共有した人間にしか通じない。

幸か不幸か、そのときはわからない。
終わりは同時に始まりで、それぞれの意思とは関係がない。
親友の死が新しい生活の始まりになったりする。
理想通りに物事が進まない苛立ちや焦りは、それぞれ誰かが癒している。
骨格は温かい話なのに、そこにいつも肉体関係が入ってくるので生臭い。
男女が揃えば当然そうなるという考え方に疑問の男の話もあるし、
触れないほうが不自然なのかもしれないし、そもそものテーマ設定なのだろう。

蔑視はしないし、嫌悪感を催さないギリギリの軽さで書かれているし、
読む気が失せるとはいわないが、どうしても、途中で飽きる。
うっかり人に勧められない本。
星2つ。

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