So-net無料ブログ作成

いつもハーシーの板チョコ [books]

ランチがだめなら板チョコで。

いつもハーシーの板チョコ(常盤新平 実業之日本社)

いつもハーシーの板チョコ

いつもハーシーの板チョコ

  • 作者: 常盤 新平
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 1991/07
  • メディア: 単行本


13の物語を彩る13のアメリカングッズと帯広告に書いてある。
その言葉に時代を感じる、古めかしい短編集。
初出は平成元年から3年までの週刊小説。
一話あたり、大体20ページで読みやすい。

銀座の裏通りで、叔父の秘書と話をする『父のパーカー』。
翻訳家だった父の遺品のパーカーで話がはずむ。
自分の店の客の若い娘を息子の嫁にと考えている『母のコカ・コーラ』。
亡き夫の思い出の品がコカ・コーラだったという話をして奥手の息子を励ます。
独り者の叔母が、甥とその連れの女性に振る舞う『フライドチキンのつくり方』。
アメリカ仕込みの山盛りフライドチキンを頬張りながら、話に花が咲く。
なかなか手間のかかるチキンと、クリーム・グレーヴィを平らげて本音が出てくる。

日曜日に祖父のひとり住まいのアパートを訪ねる孫娘の『祖父の髭』。
妻子ある男と付き合っている孫に、覚悟を持って奪えという祖父。
昼下がりの公園で、同じ団地の老夫婦と話をする『公園でハンバーガー』。
滅多に食べないハンバーガーを口にしながら、老夫婦の喧嘩を聞かされる。
十二歳差の甥の新しい恋人の話を聞く『ジーンズが好き』。
離婚した叔母はジーンズが好きで、彼女にも恋人がいる。

音楽学校の女学生が、音楽事務所の青年にくどかれる『ジッポの恋人』。
離婚したやもめ男のもとに、息子が婚約者を連れてくる『父にアイボリー石鹸』。
母子家庭でガムばかり噛んでいる娘が妊娠を告げる『ガムを噛む女』。
相手は中絶を要求し、実行するつもりだが、そこへ男が父と一緒にやってくる。
引っ越した先の町にある山小屋のような酒場の『バーボンを飲む女』。
女主人の姪と、バーボンを飲みながら親しくなる童顔の男。

離婚してやもめ暮らしの写真好きな叔父を訪ねる姪の『コダック小父さん』。
結婚を決めた恋人と、叔父の新恋人をみて、あれこれ想像する。
銀座で祖父を見かけた孫娘が、連れの女性に興味を持つ表題作。
亡き祖母の好物だったハーシーの板チョコをきっかけに親しくなった話を聞く。
最終話は父子家庭で、結婚を急かされている娘の『夕暮れにアルカセルツァー』。
ひょんなことで親しくなったバツイチ男とうまくいきそうな気配。

叔父と姪、叔母と甥、祖父と孫、そんな関係性が多い。
翻訳の仕事をして、趣味が競馬で、やたらとコーヒーを飲み、
素直で礼儀正しい若者が好き、という設定も多い。
それぞれ状況が似すぎていて、何の話だったか、ごちゃ混ぜになる。
続けて読むと、またかと思う。
アメリカンなものがキーワードになっているが、舞台は東京。
フライドチキンと浅漬けが食卓に並ぶような、いかにも日本の風情。

老いも若きも、妙に粋がっている。
もう諦めた、などと言いながらしっかり色恋に興味を示す年長組を、
初々しさと好奇心をもって眺める若年組の対比の物語。
老夫婦の人に聞かせるための喧嘩なんぞ、面白くもなんともないが、
安っぽい食べ物を挟むことでなんとなく読ませている。
本気になり過ぎない、便利でジャンクな小道具として、アメリカンが使われる。

外国への憧れを滲ませるほど古い時代ではないが、
なんでもメールで済ませるほどデジタルで淡泊な現代でもない。
母親のおでんや、父親のハンバーグを食べ、打ち明け話をする平和な世界。
まずくもうまくもなく、腹の足しにはなるが、絶賛はしない。
なるほどそれがアメリカンの薄い印象か。
軽く読めて、もう一度読み返したいとは思わない、無害な本。
星2つ。

nice!(0) 

nice! 0