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ランチタイムは死神と [books]

さらに食べ物繋がりで。

ランチタイムは死神と(柴田よしき 徳間文庫)

ランチタイムは死神と (徳間文庫)

ランチタイムは死神と (徳間文庫)

  • 作者: 柴田 よしき
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/01/08
  • メディア: 文庫


死神はアンク―とカナが振ってある。
フランス・ブルターニュ地方に伝わる死神で、それを見ると
自分か、自分の愛する人が死ぬとされている、と説明がある。
2008年に新潮文庫から「窓際の死神」として刊行されたものの改題。

幕前、おむすびころりん、幕間、舌きりすずめ、幕後という構成。
臨終近い母から小遣いをもらった男の子が、見知らぬおじさんに勧められ、
昔話の本を買って幕前から読んでいる。
このおじさんも死神らしいが、会話が道徳の教科書のようで違和感が大きい。
本編といえる二話との繋がりもなく、舞台演目のような構成にした意味も謎。
単なる物語ではなく、死神はいつも近くにいますよということか。

おむすびころりんの主人公は片思いの失恋から、過剰ダイエットを始めたOL。
具のない塩むすび一個だけの昼食を、窓際主任にみられる。
存在感の薄い彼の妙な馴れ馴れしさを疎ましく感じながら、
自分が片思いしていた男の婚約者の死を病的に願っていると告白する。
話を聞いた彼は、自分は死神であると言う。
存在を認識できるということは、主人公の周囲に死が近づいているらしい。
しかも、どうやら片思いしていた男が死ぬらしい。

実際に事故死などが身近で起こり、死神の話を半ば信じる主人公。
男を助けるために、3日後に自分の命を交換するかと持ち掛けられ、悩む。
実家に帰り、旧友と再会して話を打ち明けていると、
死を願っていた女性が突然訪れて、婚約者の消息がわからないという。
死神の仕業とわかり、電話をかけて旧友が啖呵を切ると、ヒントを得て
婚約者は事故から一命を取り留める。
が、結局彼は持病が悪化して数か月後に死んでしまう。
詐欺だと喚く主人公に死神はいう。

「(略)もしあなたが他人を助ける為に死ぬことを選んだとしても、それはあなたの人生の終わりを自分で決定した、というだけのこと。あなたの代わりに、助けた人が生きてくれるということではないんです。そんな身勝手な期待を助けた人に押し付けるのは、助けられた人にとって迷惑です。生き物はすべて、命を得た瞬間から孤独です。(略)」

主人公は遅かれ早かれ、緩やかに餓死していたという。
なんとなく、いいことを言っているような、しかしよくわからないような。
主人公が実家で母親の背を見て思うシーンも、何かおかしい。


 もし自分が突然死んだら、この背中が泣くのだ。この背中が悲しみに震え、この背中が運命を呪うのだ。
 生きる、ということは、ひとりで成り立つことではない。生きるということは、誰かに生かされ、誰かを生かし、誰かと繋がっているということだった。
(「おむすびころりん」より)


作者は、どちらをより強くいいたいのだろう。
自分が死んだら誰それが悲しむと思い込むのも傲慢な気がする。
とはいえ、生死は独りで責任を持てと諭すのも無茶なはなし。

舌きりすずめは、経済力ある男と結婚することを目標に生きる女性が主人公。
一流企業で相手探しのために勤め、結局は愛人の立場になる。
小説の賞に応募しながら優雅な生活を夢見るが落選が続く。
そのうちに、同僚が同じ賞で新人賞を取り、ちやほやされるのを見て、
妬ましさから会社を辞め、レストランで働き始める。
自分が失ったものは何か知り、できれば取り返したいと思う。

もうこの時点で、主人公の思考回路についていけない。
辞めた会社にいた男に声を掛けられ、同僚が専業作家になったと聞く。
仕事は気に入っているが、惨めさも感じる主人公に、男は死神だと告げる。
主人公とその同僚が、命の綱引きをしていると妙なことをいう。
ここらで、物語の筋にもついていけなくなる。

実はいじめを受けたりと苦しんでいた同僚の話をきき、
愛人だった男の経済破綻も明らかになって別れることになり、
自身の甘さに気が付く主人公に、いらいらする。
何も知らないほうがよかっただの、綱引きの勝ち負けがどうだの、
だから、何をいいたいのか?

生きていることが当たり前で、自分が関係しないことには興味がない主人公。
突然突き付けられた死には、ヒステリックに反発する。
誰かに愛され、評価されることに幸せを感じる受け身の人生。
前向きというより能天気に、明日が楽しみだと最後は思っている。

解説は矢崎存美さん。ぶたぶたシリーズの作家。
死には幸福も不幸もなく、結論が出なくてもどかしいと書いている。
矢崎さんはそれを否定的に述べているわけではないが、
確かにもどかしい、いらいらの募る本。
星1つ。
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