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どら焼きの丸かじり [books]

和の食べ物つながりで。

どら焼きの丸かじり(東海林さだお 文春文庫)

どら焼きの丸かじり (文春文庫)

どら焼きの丸かじり (文春文庫)

  • 作者: 東海林 さだお
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 文庫


初出は2008年の週刊朝日。2009年に朝日新聞出版から単行本で刊行。
この文庫は2013年第一刷で、結構新しいんだなと思ったが、
そういえば今年何年だっけと考える。十年ひと昔。
読んでいると、ところどころで古くなった時代を感じる。

全部で35話。大体5ページで1話。
改行が多く挿絵も大きく、あっという間に読み終わる。
丸かじりシリーズはこれが三十作目らしく、以前にもどれかを読んでいるが、
どれだったかは思い出せない。多分、被っていても面白く読むだろう。
食べ物を題材にした軽妙なエッセイで、内容は良くも悪くもすぐ忘れる。
しかしいくつか、お気に入りのエピソードが見つかる。

この本に登場する食べ物。
ワンタン、堅焼きそば、レモン、どら焼き、釜飯、精進料理、ラー油、
マヨネーズ、コンビーフ、ペットボトル、湯葉、きな粉、煎餅、ケチャップ、
大根千六本味噌汁、焼肉、金平糖、カマス、ビール、ミカンの缶詰、
帝国ホテルバーガー、ひじき、団子、ししとう、帆立、立ち食いそば、
ラーメン、ししゃも、オクラ、八宝菜、鍋、コロッケそば、筋子、茹で栗、シラタキ。

愛好しているものだけでなく、謎のもの、抗議したいもの、応援するものもある。
食べる方法や雰囲気、例えの印象のみを語る場合もある。
美味しい、まずい、の評論に終わらないところが飽きない。
好きだったのは、やはり表題のどら焼き。
見ているだけで幸せと始まる。形体も、大きさも重さも穏やかさも好きという。
上下の皮で餡にフタをしている、食感の楽しさ、美味しさを絶賛する。
しかしそこでふと我に返っている。


 餡を置いただけじゃないのか。
 置いて上にフタをのっけただけじゃないのか。
 どうもなんだかどら焼きはいろんな意味でルーズなところがある。
 諸問題が発生しているのにいっこうに腰を上げる様子が見えない。
 そういえば皮だってそうだ。
 あれ、皮か。
(「愛すべきどら焼き」より)


なんだかんだで、その大雑把な脇の甘さが好きらしい。
帆立も似たように愛好しているが、やはり好きすぎて心配している。


 帆立貝の貝柱って、ゆったりしているところが好き。
 ぽってりしていて、おっとりしていて、こせこせしたところが全然ない。
(略)
 大抵の貝は貝殻をビシッと堅く閉じでいる。
 簡単にこじ開けられないように用心しているわけで、特に牡蠣などの用心深さはただごとではない。
 ところが、帆立貝は、人がいいというのか、性格がのんびりしているというのか、最初から口を少し開けているのが多い。
(「好人物帆立貝」より)


基本的に、よくわからないものは敬遠しているようだ。
一応流行やおすすめを試したりはして、憶測だけに基づくことはいわないし、
各自の嗜好を認めたうえで、マイルールを貫く。たまに改心もする。

釜飯は混ぜずに食べたくて、店員気分を害さないよう苦労する。
ペットボトルでちびちび飲んだり、ビールをぬるくして飲むのは許せない。
「ただの膜でしょう。」と湯葉の存在価値について考える。
カマスの開きを見て「全裸、などという言葉も頭に浮かぶ。」
対話するように言葉がぽんぽん出てくる。


 ここで突然ですが座禅の話になります。
「スパゲティナポリタンになります」の感じで座禅になりますが、「よろしかったでしょうか」。
(「心静かにミカンの缶詰」より)

 中華料理の名前は、名前のどこかにヒントが入っている。
 酢豚ならば、とりあえず豚肉。調味料に酢を使っている。
 かに玉。かにと玉子をどうにかしたやつ。
 エビのチリソース炒め。これなんか、ほぼ全容を名前が言い表している。
(「八宝菜よ、わが身を語れ」より)

 木の実のくせにザブトンを敷いている。
 ちゃっかりしてるんですね。
 それにトッポイところもある。
 頭のてっぺんをトッポク尖らせている。
(「茹で栗ぽくぽく」より)


シラタキを図解して、ここが好きなどと細かいことを言ったり、
ラーメンなんていいかげんでいいのと憤ったり、さじ加減が面白い。
佐藤和歌子さんの解説で、表紙絵が和田誠さんであることを教えられ、
またふっと笑わされる。
星4つ。

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