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ちどり亭にようこそ2 [books]

貸してくれた友の評価はいまいちだったけれども。

ちどり亭にようこそ2(十三湊 メディアワークス文庫)

ちどり亭にようこそ2 ~夏の終わりのおくりもの~ (メディアワークス文庫)

ちどり亭にようこそ2 ~夏の終わりのおくりもの~ (メディアワークス文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: Kindle版



「夏の終わりのおくりもの」と副題があるとおり、夏の話を5つ。
前作が春だったので、少なくともあと2巻、秋と冬が続くことが予想される。
表紙には、土鍋の鮎ごはん、甘酢茗荷、海老塩焼き、生姜焼き、
ゴーヤ天ぷら、春巻き、紫陽花の和菓子、あとひとつ謎の料理が
美味しそうに描かれている(イラスト:イシヤマアズサさん)。

京都の姉小路にある小さな弁当屋の物語。
由緒ある家の娘が店主で、幼馴染の院生が入り浸っているが、
前作でよりを戻した婚約者のためにも弁当を作り始め、幸せそう。
一人称の主人公は、アルバイトで料理素人の学生。
名古屋出身で京都の地理や慣習にも疎い。山歩きのサークルの女子と、
こちらもいい雰囲気になっている。
読みながら、前作を少しずつ思い出す。
アレルギーの小学生や、料理の師匠の話など、当たり前に出てくる。
さらに、失踪した店主の兄の元婚約者、料理の兄弟子、常連のバツイチ親子、
糖質制限ダイエットで人格が変わっているサークルの後輩などが登場。
弁当屋で悩みを打ち明けたり、店主が頼りにしたりと輪が広がって、
外で弁当を広げる場面も多い。

店主の父親も現れ、結婚にあたって店を続けるかどうかで揉める。
俺様貴族で不愛想だが優しい婚約者とも妙な喧嘩をしているが、
物語全体はいたって穏やか。デレデレの幸せモード。

家の伝統を守る、という大義があり、弁当屋を続けたいという夢もある。
婚約者に勝手に憤りながら、子どもたちに料理を教え、新作を研究し、
優雅で楽しそうな店主を見守る主人公。
やはりというべきか、自身も料理に興味をもつようになっている。
筋はあるようなないような、人情話。

あとは、読むだけで作れそうな、豆知識満載の料理を堪能するのみ。
献立や、着物の柄、京都の風情にも季節感が溢れている。
茄子とオクラの焼きびたし、京巻きのふわふわだし巻卵、水無月豆腐、
新生姜の炊き込みごはん、賀茂茄子田楽、冬瓜の海老あんかけ、琥珀糖、
桃のかき氷、枝豆のポタージュ、小豆・きなこ・いちじくの水羊羹。
「ジューシーな果肉と種のプチプチした食感が楽しく、
 果汁を閉じこめたピンクの水羊羹はとろりとしている。』


 したためてから時間をおいて届くもの、用意した人のいないところで開かれるものという点で、お弁当と手紙は似ている。

「人間は、何かを生産せんならん。料理でも、日記でも、畑仕事でもええ。消費だけしとるもんは、いつまでたっても不安で落ち着かん」
(「6.乃東枯、鮎ごはんと字のない手紙」より)

 ちゃぶ台の上に並んでいた、塩むすびと味噌汁、茶碗蒸しと青菜のおひたしを思い出す。
 お手本のような朝餉。
 泰山先生の奥さんが言っていたように、これが日常になっていくのだ。
 毎日の家での食事とお弁当。無意識に蓄積されていく信頼のかけら。
(「9.大雨時行、塩むすびと氷の響き」より)

 いつか黒岩さんが言っていたように、子どもは食事が出てくるまでの過程に無頓着だ。気づかないし、知らないままでいることが許されてしまう。
 そしてそれは、食事に限ったことではない。
 知らないまま、無頓着のままでいられることが、親に守られた子どもの特権なのだった。
(「10.天地始粛、生姜焼きと最初のお弁当」より)


筋に集中しない分、優しい雰囲気に浸っていられる。
食べることを大切にする人を眺めるのは心地よい。
ぎすぎすと荒んだ感じのない、ふわふわの物語。
星4つ。

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