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フェルメールの仮面 [books]

藝大の読んでから、美術のタイトルに目が留まるように。

フェルメールの仮面(小林英樹 角川書店)

フェルメールの仮面

フェルメールの仮面

  • 作者: 小林 英樹
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/09/01
  • メディア: 単行本


フェルメールの贋作疑惑を取り上げた物語。
主人公はパリの私塾で学んだ画家で、模写技術にも長けている。
小樽の絵画塾を手伝い、模写を集めた美術館を作る企画に携わる。

そんな中、恩師の紹介で謎のアメリカ人が旨い話を持ってくる。
桁外れの資金や作品の提供に怪しさを感じながらも魅力を断ち切れず、
依頼にこたえていくうちに、フェルメールの贋作の謎にも迫っていく。
最後は、恩師たちの裏切りを知り、真相を暴こうとするが行方不明になる。

主人公は絵画塾の娘となんとなくいい仲になっている。
また、昔の知人女性も近づいてきて、背中を押される。
慎重派と行動派の二人は対照的だが、迷う主人公の協力者となる。

現在の話の間に、主人公が遺品を見つけた19世紀頃の画家の話が挟まれる。
パリの工房で働きながら、画家を目指すが模写の仕事が多い。
才能を認められず、時代の変遷に呑み込まれ、贋作製作に手を染めていく。
最後は世を儚み、恩師や若い友人の死を追うように自殺をはかる。
ふたつの時代が似たような環境で書かれるため、主役級以外は紛らわしい。
両方の世界にうまくのめりこめず、消化不良に陥る。

フェルメール作と伝えられる絵の怪しい点を、専門家目線で追究する。
非科学的な考察ではあるが、十分に謎解き要素はあって面白い。
作中に登場する作品も口絵として掲載されている。
師匠やパトロンが語る、模写の意義や贋作の正当性は、うっかりすると
すべて納得してしまう。


「発覚しなければそれでよいのだし、発覚することはない。買い手は欲した作品を手元に置き、喜びを手に入れるのだから恥じらうこともない。まがい物で十分しあわせをつかめる人々がいるならそれでも結構じゃないか。
 肝心なのはしあわせの度合いの高さであって、それがどれだけ優れた作品であるかではない。(略」

「われわれには人類の大切な宝物を守る責任がある。(略)
 いくら精巧な写真があっても、写真は表層を写し取っただけであり、物質としての構造を有する絵画とは異次元のものだ。(略」

「魂をふたつもてるかどうか。
 純粋であることは素晴らしい。しかし、純粋さをすべて美と勘違いしている者もいる。純粋な判断だけに従えばシンプルな生が刻まれるだろうが大切なものを失いかねない。もう一段階高いところで、純粋さを突き放してみられるかどうか、肝心なのはそこだ。(略」


芸術作品の価値が、どこにあるのか。
オリジナルの状態を保存すること、本物を広く公開することの矛盾。
何が重要なのか。
ぼんやり無意思で読んでいても面白くない。

自分が評価されないことへの焦りや憤り、プライドや正義感。
芸術家に限らず、そういう思いで目が眩んでしまう事件はどこにでもある。
美術ミステリーに、人間共通の弱さを絡めた物語でずっしり。
星4つ。

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