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第37回市民バンドフェス [etc...]

白いものがぽつりと頬に当たった。
桜の花びらより硬く冷たい小さな球体が、一気にざあっと斜めに降ってくる。
霰。
明日から5月だが、吐く息は白く、むき出しの耳は凍傷になりかけている。
昨日の夢のような時間を思い出し、沸き起こる得体の知れない怒りを鎮める。

第37回市民バンドフェスティバル in Sapporo
2016年4月29日@札幌コンサートホールKitara

市内の7つの吹奏楽団による合同演奏会。
全席自由の千円未満という破格の料金で、素人さんの発表会レベルかと思っていた。
伏して詫びなければなるまい。
非常に楽しくレベルの高い充実した、とにかく素晴らしい演奏会だった。



合同ファンファーレから始まり、まずは札幌シティバンド。
マーチ「春風」(南俊明)と、「アラジン」よりセレクション(アラン・メンケン)の二曲。
中村暁生氏の指揮で、少人数ながらブレのない演奏を聴き、これはと姿勢を正す。

札幌市民交響吹奏楽団、指揮は坂井繁氏。
ピータールー(M.アーノルド)と、花の香(天野正道)の二曲。
物語性の高いメロディで、曲調が次々に変化していく。リズムも難易度が高い。
特にパーカッションの方々の活躍がめざましく、戦争の様子や季節感が見事に出ていた。
想像力をかきたてられる、情緒豊かな演奏で、7団体中で一番聞き入った。

札幌青少年吹奏楽団、指揮は葛本二三雄氏。
スクーティン・オン・ハードロック(デイヴィッド・R・ホルジンガー)、
「ウィルソン組曲」より「穏やかな雨」(ロバート・W・スミス)、
映画「ミッション」より「ガブリエルのオーボエ」(エンニオ・モリコーネ)の三曲。
二曲目では指揮者が傘をさして途中でいなくなるなど、奇抜な演出。
若々しい勢いだけは抜群だった。

札幌ブラスバンド、指揮は米田浩哉氏。劇団四季を勝手に応援しているらしい。
マーチ・スカイブルー・ドリーム(矢藤学)、ミュージカル「ウィキッド」より(ステファン・シュワルツ)、
「スター・ウォーズ」よりメイン・タイトル(ジョン・ウィリアムズ)の三曲。
団体紹介文が特殊だったようで、司会の金田一仁志氏が楽しかった。
ウィキッドは丁寧すぎる慎重な硬さがあり、スターウォーズはノリは良いがやや雑な演奏。
しかしまあ、楽しそうな団体である。

休憩を挟み、サッポロシンフォニックバンド、指揮は鈴木栄一氏で、編曲も手掛けている。
歌劇「はかなき人生」より(マヌエル・デ・ファリャ)と、
劇付随音楽「夏の夜の夢」より序曲、結婚行進曲(フェリックス・メンデルスゾーン)。
統一感のあるのっぺりと粘性の高い音で、弦楽器を思わせる不思議な演奏だった。

札幌ユース吹奏楽団、指揮は大泉徹氏。
アイヌ民謡「イヨマンテ」の主題による変奏曲(福島弘和)、
アヴェ・マリア(フランツ・P・シューベルト)、ドラゴンクエストⅢ~そして伝説へ(すぎやまこういち)。
各パートが粒の立った音を響かせ、それぞれよく聞こえるのに、全体としてもバランスが良い。
奏者の腕はもちろんだが、指揮者の引きだし方が秀逸。演奏はここが一番巧く感じた。

札幌吹奏楽団、指揮は菅原克弘氏。
プスタ(ヤン・ヴァンデルロースト)、アミューズメント・パーク組曲(高橋宏樹)の二曲。
派手さはないが、バランス感の高い演奏で、気付けばここでもう3時間ほど経っていた。

最後は7団体有志の合同演奏で、指揮は中村暁生氏。
旧友(カール・タイケ)、ヴァルドレス(ヨハネス・ハンセン)、サーカス・ビー(ヘンリーフィルモア―)。
それぞれドイツ、ノルウェー、アメリカのマーチで、国柄の違いもよくわかった。
さらに余市パイピングソサエティというバグ・パイプバンドをゲストに、
スコットランドの勇士(佐藤敏直)は、初めてバグ・パイプの音色を聴けてそれだけで感動。
スーザ・マーチ・スペシャル(岩井直博編曲)で、華々しく終わる。

アンコールは再びバグ・パイプを加えて、蛍の光。
どこかジャズのような明るい雰囲気のメロディで、元気に終了。
あっという間の3時間半である。

超一流の、ただただ呑み込まれるようなプロ演奏ではないが、
自己満足の素人発表会ではまったくない。
7団体それぞれ個性のある演奏、選曲もバラエティ豊かで面白い。
上質なオムニバス小説のような、味わい深い会だった。
こんな音楽家たちが集うのなら、寒いけれども、いい町だ、サッポロ。多分。

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